白紙

投稿日

カテゴリー:

宣言通り白紙です。対戦よろしくお願いいたします。

この記事は、はんドンアドベントカレンダー11日めの記事です。
当日の15時から書き始めました。遅刻遅刻〜!

さて、白紙、すなわち白い紙ですが、みなさん見たことはありますか?
おそらく日本に住んでいて白い紙を見たことがない人はいないと思いますが、念の為説明しておくと、白紙とは、白い紙のことです。

そんな身近な紙ですが、実はひとくちに白い紙と言ってもその種類は膨大にあります。
ティッシュやキッチンペーパーなどの生活用紙も白い紙ですし、壁紙や障子などの建材に使われていたりもします。
この記事では、数多ある紙の中でも、印刷用途に製造されている紙の話をしたいと思います。こうして印刷用に範囲を狭めましたが、やはりその種類はとても多いです。
例えば、印刷向けの製紙会社の代表2社である株式会社竹尾と平和紙業株式会社の白い紙にはこんな種類があります。

image

竹尾ミニサンプル(各種見本帳) 20211211閲覧

image

紙の検索|ファンシーペーパーの平和紙業株式会社  20211211閲覧

これらひとつひとつの銘柄のなかにも、スーパーホワイトやナチュラルといった色味の違いがあったり、厚さの違いがあったりします。この2社だけでも、膨大な種類の白紙を作っていることがわかりますね。

なお、「白い紙の色名」については、以下の記事が面白くまとまっているので、ぼくからの解説は省くこととします。
白い紙の色名、どれくらいあるか数えてみた。|ヤグチサトコ|note 

上記に加え、普段みなさんが使うような、名もなきコピー用紙も、様々なメーカーによって様々な種類のものが作られています。家電量販店のコピー用紙コーナーを思い浮かべていただけたら、その種類の多さがわかるのではないでしょうか。

たかが白い紙なのに、一体なぜこんなに種類があるのでしょうか?
いくつか実際の紙を例に挙げつつ、いろいろな紙の特徴を見てみましょう。

塗工紙と非塗工紙

まず大きな違いとして、紙が漉いたままの状態なのか、何かしらのコーティングがされているのか、という違いがあります。

◉非塗工紙

image

漉かれたままの紙です。
コピー用紙やノート、書籍など、よく目にする紙はこちらが多いです。
有名な銘柄だと、上質紙やケント紙などは聞き覚えがあるのではないでしょうか。
少し紙に詳しい人だと、アラベールなんかも聞いたことがあるかもしれませんね。

◉塗工紙

image

紙に塗料を施したものです。
よく聞くのはコート紙、マットコート紙など。
その他、様々な高級紙で目にすることがあります。

非塗工紙は、紙そのものに直接印刷するため、その紙が持っている風合い――すなわち手触りや見た目、テクスチャなどの良さがストレートに出ます。美術用語で言うと「マチエールで勝負」という感じでしょうか。
一方で、印刷再現性……つまり、印刷データの色や線などを忠実に表現することに関してはやや劣ります。

塗工紙は、印刷に適したコーティングをするだけあって、印刷再現性に優れています。また、インキの吸収率がよく非塗工紙に比べ色移りの恐れが少なかったり、コーティングによって紙に高級感を付与したり、と、様々な付加価値があります。

一概にどちらが良い悪いということではないのです。

ちなみに勘違いされがちなのですが、よくパッケージなどでみられるツヤっとしたフィルムのような紙は、非塗工紙・塗工紙といった区分ではなく、PP貼りやニス引きなどの印刷の後加工です。
塗工という工程はあくまで印刷の前に、紙そのものに対して行われる加工のことを指しています。

◉塗工の種類
前項で塗工紙には「様々な付加価値がある」と言いましたが、塗工紙の性質を左右するのはずばり塗工の種類です。
大まかに、グロスコート紙・マットコート紙・アート紙・ダルアート紙に分かれます。
ハイマッキンレーという紙はそれぞれの塗工が用意されているので、一度見比べてみると塗工による違いが完全に理解できます。

image

・グロスコート紙
つるっとした紙です。カタログの表紙などによく使用されます。

・マットコート紙
その名の通りマットな紙です。おちついた高級感が出る一方でインキの乾きが遅かったりします。

・アート紙
コート紙よりさらに塗料を多めに使った、光沢があって平滑性の高い紙です。美術書や写真集、ポスターなんかに使われます。

・ダルアート紙
光沢を抑えたアート紙です。インキがのった部分は光沢が出ます。印刷面と白紙の表情が異なるため、文字や画像を引き立てることができます。枚葉紙(ロール状ではなく、規格サイズに切られた紙)しかないため、大量印刷には不向き。

また、コート紙よりもさらに塗料が少ない微塗工紙というものもあります。
これは印刷再現性はあまり重視せず、インキの定着性のみを求めた紙で、大量印刷するチラシやパンフレットなどに用いられることがほとんどです。

ここまでごらんいただいたように、紙への塗工・非塗工だけでもこれだけの種類があります。
ここからさらに、紙の原料や漉き方、仕上げ方法などによって無数の種類が生まれるわけです。
それらすべてを網羅すると、数千……下手すると数万種類の紙を紹介することになります。
それはさすがに無理があるので、ここまで読んで興味が湧いた方は、ぜひ紙見本帳を買ってみてください。
手軽に手に入るのはネット通販系の印刷屋さんです。ベーシックなものが一通り揃うグラフィックや、特殊紙の多いプリンパ、無料で手に入るWAVEなど、たくさんの印刷会社さんから紙サンプルが出ています。
印刷通販系の紙見本帳の良いところは、いろんな製紙会社の紙がひとまとめになっているところ。それぞれを別個に取り寄せるより手間が少ないです。

image

また、株式会社竹尾や平和紙業のギャラリーに行くのも手です。
東京・大阪・名古屋・福岡などにあります。
見本帖本店・各店|紙を選ぶ|竹尾 TAKEO
ギャラリー情報|ショップ&ギャラリー|ファンシーペーパーの平和紙業株式会社

image

もっとも手軽なのは、大きめの文房具屋さんや東急ハンズの文具コーナーなどに行くことかもしれません。気に留めていないだけで、実は身近にも様々な「銘柄紙」が販売されています。

※白紙とは若干逸れますが、ぼくが持っている中で一番好きな見本帳は五條製紙さんのSpecialitiesです。きらっきらの紙たちが並んでいて見ているだけで楽しい!

image

▲ギラギラしてる紙たち

それでは、最後に後加工の話をさらっとしてこの記事を終わることにします。

世の中の印刷物のほとんどは、刷っただけで終わりではありません。印刷をしたあとに何らかの加工がされて商品として出荷されます。いくつか見ていきましょう。

image

▲変な加工がいっぱい入ってる篠原紙工さんの見本帳

◉断裁
ほぼ100%行われる加工です。仕上がりサイズの紙に印刷をすると、どうしてもフチのほうは印刷不可領域になってしまいます。家庭用のプリンタで印刷すると白フチができますよね。
それを解消するために、印刷会社では大きめの紙に余分に印刷したあとに仕上がりサイズに断裁を行っています。余分な部分を「塗り足し」、裁断の目印を「トンボ」と呼びます。大きな規格紙から仕上がりサイズをいかに効率よく取るか、という作業を「面付け」と呼びます。

image

▲トンボとカラーバー

余談ですが、家庭用プリンタのフチ無し印刷は、純粋に紙からはみ出してインキを吐出しているだけです。そのため、受け口のスポンジにインキが蓄積されたり、連続でたくさん刷ると次の紙が汚れてしまったり、などのデメリットがあります。どうしても家庭用プリンタでフチ無し印刷したいときは大きめの用紙にトンボを付けて自分で裁断すれば回避できます。

◉折り
二つ折りにしたり、三つ折りにしたり……チラシやパンフレットなど、折ることによって製本とまではいかないけどどこか冊子然とした印象にすることができます。

◉製本
本ももとは一枚一枚の印刷物です。代表的な綴じ方に、平綴じと無線綴じがあります。二つ折りを針金で綴じられているものが平綴じで、漫画の週刊誌のようなものが無線綴じです。(針金のことを線と呼び、それがないので無線と呼ばれます)。
その他にも、特殊な製本方法がさまざまあります。

◉抜き
断裁は直線で切ることを指しますが、世の中にはいろんなかたちの紙がありますよね。それを実現するのが「抜き」です。
抜きにも種類があり、「トムソン型」と呼ばれる型を作って抜く方法や、レーザーカッターを使うもの、カッティングプロッタと呼ばれる大型のカッターを使うものなど、ロットや種類によって使い分けられています。

◉表面加工
PP貼りやニス引きなど。印刷面の保護に使うほか、高級感の付与などにも役に立ちます。ここも掘り下げると無限に種類がある。

image

◉その他特殊加工
みなさんも一度は図工で紙を扱ったことがあると思いますが、本当に、紙っていろんなかたちになるんです。例えば、開くと飛び出す絵本のような加工だったり……。

image

かように、紙には無限大の可能性が秘められています。いわんや、これから何でも描ける白紙をや……!
白紙、なんて素晴らしいんでしょうか。白紙最高ですよね。
締め切り前に見る白紙ほど絶望的なものもないですけどね。

ということで、いかがでしたか?
普段なにげなく扱っている紙のこと、ちょっとでも気にして見てくれるようになったらぼくは嬉しいです。

なお、ぼくは真のバカなので同日にベストバイのほうにもエントリーしています。これは今から書きます。フォントの話します。こっちはマジで遅刻するかもしれません。イナバP先生の次回作にご期待ください!

追記:書けました。どうぞよしなに。

はんドンアドベントカレンダーはまだまだ続きます。ここまでもみなさまの力作揃いでしたが、きっとここからも良質なエントリが読めることでしょう。楽しみですね。(圧)

それでは、お粗末さまでした。ごきげんよう〜

コメント

“白紙” への1件のコメント

  1. […] さて、昨年から参加しているはんドンアドベントカレンダー、ぼくは匿名希望さんへのアンサーソングを書くことに喜びを見出しています。去年は白紙で提出ということだったのでぼくも白紙で提出しました。 […]